神体を持たない神社はあるけれど、祭礼をもたぬ神社はない。しかも同じ祭神でありながら、土地が変れば祭りも変る。ここが我国の神社の尊いところで、且つ祭礼なるものが、その神社に属して、特殊の発達と交渉を有する点である。
そして、我国の祭礼は遠く神代から行はれてゐて、三千余年の長い歴史を経てゐるのであるが、此の長い歳月の間に工夫された祭礼の数々は、その名称を挙げるだけでも容易なことではない。従つて、一々これを系統づけて記すことは、詮索に限つて興味が尠いので、ここには官祭と私祭との別なく、稍奇態なる風俗を件うてゐる祭礼に就き、全国に渉つて次第なく書きつづけるとする。
(〇〇○○十六ノ99)