昔は村の娘は若者の共有であつた。此奇風俗が今も残つてゐる所がある。
青森県尻屋崎附近の村々では、村の娘と出戻りの婦人とは、殆ど若者の共有物だつた。娘達は十五歳になると、娘宿とて定めてある家へ泊りに行き、そして若者達の要求には絶対に従はね1ばならなかつた。もし要求を拒むと、その娘は此の上もなき迫害と制裁が加へられる。
即ち拒まれた若者は、此のことを娘の父兄に知らせると同時に、村内の肝煎へ報告する。娘の父兄はその不心得を諭すために、娘を二週間も一室に監禁して、村の掟を説いて不都合を責めるが、それでも娘が聞き入れぬときには、断然家を追ひ出すのである。
又この反対に、娘達は外来者に対しては絶対に貞操を固守せねばならぬ。