性的迷信に由る犯罪の方は、以上で大体を尽したので、今度は奇風俗の方を書くとする。
大分県日田郡夜明村では、昔七月十五日の夜に盆××と云ふ行事があつたさうだ。
此の夜は、一村の男女が総出となつて綱引の勝負を争ふが、此の夜に当年十四歳に達した女子は、必ず男に許さねばならぬこととなってゐる。若し許さぬ女子があれば不具者として待遇され、婚期の後れるのが習ひとなつてゐた。同県臼杵町の近郊にある某村でも、昔八月に鎮守社の祭が行はれたが、此の夜は既婚未婚を問はず、氏子の婦女三の男に許す掟となつてゐた。
それが為めに若くて美しい女は掟の義務を容易に果すことが出来たが、年老いて醜き女は一人の男すら得られずして、夜を明してしまふ恋しい喜劇が繰返されるさうである。これは斯うすることが、氏神様の悦ぶ為めであるといふ迷信から来てゐるのである。