四、床入の夜の生んだ悲劇

結婚の夜の床入りに際し、往々にして女子は××することがある。これは言ふまでもなく生理的の原因で、少しも不思議とするに足らぬのであるが、かうした女子を妻にすると、不幸を見るとて離縁する迷信が各地に行はれてゐる。

茨城県土浦町に近い某村の上村花子(仮名)も、二十一歳で結婚したが、かうした事情で、結婚後三日で離縁されてしまつた。併し花子としては、諦められぬ恨事であった。身の不始末と云ふではなく、生理的の作用であるのに離縁とは、何としてもそのまま泣き寝入るには残念でならぬ。

花子は此の無情なる新耶を殺害し、自分も死なうと決心して、或る夜婚家に忍び入り、新郎に斬りつけて負傷させたが、遂に捕縛され、水戸裁判所で懲役六ヶ月に処せられた。

支那では此の反対で、新婚の夜に××せぬ花嫁は、処女でないとて離縁されても、苦情の言へぬことになつてゐる。そして、これが為に純潔を疑はれ、自殺した花嫁も尠くない。